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 漆器の話

     

   漆器やその材料となるうるしは日本固有のものではなく、広くアジア地域にみられる。
   しかしながら漆器は古代から日本独自の発展を続けてきた。
   その発展を促した最大の理由は漆の性質が日本の気候風土にあっていたことが
   あげられる。
   一般的な塗料は水分が蒸発して硬くなる。
   対して漆は適当な温度と湿度があり主成分が硬化する。
   つまり漆は湿度の高いところで硬化、乾燥するのである。

  優美な肌あいを持つ漆器は日本人の美意識に通じるものがあった。
  漆器の装飾デザインである蒔絵は、優美な大和絵が伝統として受け継がれた。

  漆工芸は、貴族や武家階級のものとして長く生産されてきた。
  生産地も京都、江戸、金沢とごく一部の地域に限られていた。
  しかし江戸時代末ころから全国で作られるようになり急速に庶民の生活に
  用いられるようになった。


 


「漆器の産地」
現在、漆器を生産していないのは埼玉県と千葉県だけといわれる。
越前河和田・・平安時代から
紀州根来・陸奥浄法寺・・鎌倉~室町時代
これらの地域が漆器を作っていたが主な生産地は、江戸、京都、金沢である。
江戸時代になると庶民の生活にも浸透し需要が増える。
諸藩が現金収入のひとつとして奨励し全国に広まる。

津軽塗、能代春慶、会津塗、勇助塗、城端塗、輪島塗、山中塗、飛騨春慶、若狭塗、大内塗
など

これらの産地は、現在も漆器の産地として有名だが昔ほど特徴がはっきりしなくなってきている。

漆器の製作工程は36工程にわかれる。
できあがるまでおよそ3か月かかり、工程が複雑なため作業は分業を行う。

1.素地  竹・皮もあるが現在は木材を使用
箱類:檜・松・さわら・あすなろ・銀杏
椀類:はんのき・ぶな・板谷・楓・桂・栗・ほう

2.塗  〇下地塗
     〇上塗
〇下地塗
下地塗には、漆下地、膠下地、酪素下地、渋下地、透明下地などがある。
この下地塗を丁寧に行わないと、例えば盆などの場合は熱い汁などの入った
器をのせると輪形が白く残る。
下地をきちんと仕上げたものは輪形がついたとしてもすぐに消える。

〇上塗
上塗りの代表的なものは、塗立て(花立て、溜塗りともいう)
と蝋色塗の2つがある。
①塗立て 油分を混合した漆を均等にぬる。
色あいが鮮やかで油分を含んだ漆が漆器特有の光沢をだす。
②蝋色塗 上塗漆を塗り乾燥させて荒研ぎをしてさらに漆を
刷毛でつけ拭く。
その他
③透明塗 素地の木目を生かした塗方
④彩漆塗  彩色漆で文様を表す
⑤曙塗   下に朱塗をして黒蝋色塗して曙のような感じをだす
⑥根来塗  黒地塗の上に朱塗をしてところどころ研ぎだしし
        黒地を現す  

3.装飾
「蒔絵」     漆で模様を描いた上に金紛や銀紛を蒔く方法をさす。 
       ①平蒔絵 生漆にベンガラを混ぜた絵漆で文様を描き乾燥しないうちに  
       金紛、銀紛を蒔きつけ乾いたら樟脳を混ぜた漆をその部分に塗り
       光沢をだす。
       ②研出蒔絵 絵漆で文様を描いた上に金銀粉を蒔きつけ乾燥後黒漆で
       塗り乾いたら木炭で研ぎ文様を現す。

「金銀絵」 金銀泥粉を膠で溶いて漆器に模様を描く方法

「螺鈿」   貝殻をすって平にし文様に切りこれを漆器や木地にはめ込む。

「切り金」  金銀の薄板を細かく切り蒔絵の中に置く。

「堆朱」  漆を塗り重ねて厚い層を作りこれに文様を掘り込む。
       黒漆を塗ったものを堆黒、黄漆のものを堆黄という。

「沈金」  漆器面に線彫をしその凹面に摺漆をして金箔をつけたもの。



「漆器の扱い方」
使い終わったらすぐに洗い水を切り柔らかい布巾で拭く。
1日ぐらい放置して保存。
重箱のような正月用の用途の漆器は、適当な湿度を保つところ
押し入れや蔵にしまう。
1年に1度風を通す。



(参考文献)月刊専門料理別冊 日本料理
(補足)上記掲載写真:輪島塗       2024年12月
能登地方大地震復興応援展示販売 (於:東京・府中市)
無地の漆器工程:70工程
色漆器の工程:120工程